『人に話したくなる世界史』を読んで話したくなること

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教科書には載っていない。授業でもやらない。確かに、知ったら誰かに話して「へええ!」と驚いて貰いたい話ばかりです。

ツタンカーメン王のマスク
ツタンカーメン王のマスク

引用元:ツタンカーメン王のマスク Pavel Špindler CC-BY-3.0

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目次

『人に話したくなる世界史』 玉木俊明(著) 文春新書

帯がね、懐かしのアニメですよ。母を慕い、三千里を旅する健気なマルコね。

帯に「なぜマルコは、ジェノヴァからブエノスアイレスへ行ったか」とあります。ちょっと気になりますよね。

タイトルも「人に話したくなる」ような世界史です。

読めばちょっとトクしそうですね。周囲よりワンランク賢くなれそうです。

著者はヨーロッパ史、世界史に関する著書も多い玉木俊明氏です。

とても親切なことに、各章の最後に「もっと知りたい人のためのブックガイド」があり、玉木氏の推薦なら読んでみよう、読んで更に詳しくなっちゃうぞ、という気にさせます。

『人に話したくなる世界史』

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『人に話したくなる世界史』 玉木俊明(著) 文春新書
  • 出版社 ‏ : ‎ ‎文藝春秋
  • 発売日 ‏ : ‎ 2018/5/20
  • 新書 ‏ : ‎ 228ページ

この本の目次

  • はじめに
  • 1 アレクサンドロス大王はなぜインダス川を越えられなかったのか
  • 2 ヴァイキングはイスラーム商人と商売していた
  • 3 大航海時代のはじまりはアフリカの黄金目当て?
  • 4 織田信長「天下取り」を支えたアジア交易圏
  • 5 グーテンベルクのもうひとつの「革命」
  • 6 本当はしぶとかったポルトガルとスペイン
  • 7 大数学者フェルマーが保険の基礎をつくった
  • 8 大英帝国は借金上手?
  • 9 綿が語る「アジア vs. ヨーロッパ」の大逆転
  • 10 「中立」がアメリカを大国にした
  • 11 蒸気船の世界史
  • 12 手数料を制する者、世界を制す
  • 13 中国がヘゲモニー国家になれない理由

この目次だけ見ても興味深い話題が並んでいますが、小見出しは更に興味深いです。

1の中からは「メソポタミア - インダス間で交易が」「ファラオのマスクにラピスラズリは輝く」、2の中からは「掠奪か交易か」、3「船酔いで船に乗れなかったエンリケ航海王子」「「大航海時代」は日本独自の用語」「サハラ砂漠とハンニバルの象軍団」、4「「死の商人」としてのイエズス会」などなど、なんだか面白そうでしょ?

1 の中の「ファラオのマスクにラピスラズリは輝く」が気になった

「1 アレクサンドロス大王はなぜインダス川を越えられなかったのか」の中で気になった箇所です。

古代エジプトでは、王侯貴族のアクセサリーにしばしば高価なラピスラズリが用いられました。

ラピスラズリのスカラベをゴールドプレートとゴールドのワイヤーリングにセット 直径 2.5 cm 中王国時代(紀元前1850年頃〜紀元前1750年頃、アメンエムハト3世の治世) メトロポリタン美術館蔵
ラピスラズリのスカラベをゴールドプレートとゴールドのワイヤーリングにセット 直径 2.5 cm 中王国時代(紀元前1850年頃〜紀元前1750年頃、アメンエムハト3世の治世) メトロポリタン美術館蔵

引用元:ラピスラズリのスカラベとゴールドプレートのリング CC-Zero

当然、ファラオであるツタンカーメンのマスクにも使用されています。

真正面からだと黄金の輝きが眩しいので、こちら斜めからの画像をお借りしました。

マスクの青い部分にはラピスラズリが埋め込まれています。

ツタンカーメン王のマスク
ツタンカーメン王のマスク

引用元:ツタンカーメン王のマスク Jerzy Strzelecki CC-BY-SA-3.0

このようによく使われたラピスラズリですが、

古代エジプトにおいては、ラピスラズリは天空と冥界のオシリスの石とされていましたが、実はこの地ではラピスラズリは産出しないのです。では、このラピスラズリはどこから来たのか。

玉木俊明(著). 2018-5-20. 『人に話したくなる世界史』. 文春新書. p.24.

昔、骨董屋になりたかった私は必要になりそうな知識を身に着けたくて、他大学の聴講や宝石学校にも通いました。

その時ラピスラズリのアクセサリーを入手したり学校で勉強したりしたのですが、確かラピスラズリはアフガニスタン辺りで産出するのだと聞きました。

ということは、ラピスラズリはアフガニスタンから、遥かエジプトの地まで運ばれてきたのでしょうか。

ほぼ間違いなくインダス文明に属する地域から輸入されたものでしょう。すなわちメソポタミアのみならず、エジプトもインダス文明と交易関係があったのです。定住による農耕生活が開始されても、人類の移動が停止したわけではありません。

玉木俊明(著). 2018-5-20. 『人に話したくなる世界史』. 文春新書. p.24.

学校で習った時、文明同士の交流の話ってあまり聞かなかったような気がします。

資料集に書いてあったけど、スルーしちゃったんでしょうか。

こういう話って、中学生の時なら「ふーん」で終わってしまったかもしれません。

大人になり、美術展や博物館に行く機会が増えて、理解がより深まった時そのすごさ・面白さがやっと解るのかなと思います。

この記事を読んでくださった後、古代エジプトの黄金のマスクやアクセサリーのラピスラズリを見るたび、私と同じように古代文明間の交流にロマンを感じてくださると嬉しいです( ̄▽ ̄)。

6 の中の「フェリペ二世の時代」も気になった

16世紀のスペインに、新大陸から安価な銀が持ち込まれます。

スペイン王フェリペ2世(1527年5月21日-1598年9月13日) 1555年頃-1558年頃 アントニス・モル プラド美術館蔵
スペイン王フェリペ2世(1527年5月21日-1598年9月13日) 1555年頃-1558年頃 アントニス・モル プラド美術館蔵

引用元:スペイン王フェリペ2世

歴史に名高いレパントの海戦(1571年)、アルマダの海戦(1588年)もこのフェリペ2世の時代でしたが、

また彼の時代、ポトシ銀山(現ボリビア)など新大陸の銀山からヨーロッパでは考えられないほどの銀が産出されました。その新世界の銀のほとんどがスペイン本国に流入し、当時の世界経済を動かします。しかし、フェリペ二世は、それを戦争の資金として使ったために、国内経済は発展せず、スペイン経済はたちまちのうちに衰退した - というのが、従来の見方でした。

玉木俊明(著). 2018-5-20. 『人に話したくなる世界史』. 文春新書. p.108.

フェリペ2世は父親(スペイン王、神聖ローマ皇帝カール5世)から広大な領地を受け継ぎました。

本書によると、フェリペにとって真に重大な課題とは、スペイン、ネーデルラント、イタリアから成るこの帝国を繁栄させることでした。

 近代に入り、国民国家が成立すると、イギリス史、ドイツ史、スペイン史といった各国史が重要な研究テーマになり、歴史家もどうしてもその視点から歴史を見がちになります。しかし、フェリペ二世はもっと広い視座から、自分の帝国を運営する必要がありました。

 スペインに流入した新大陸からの銀が送られたのは、当時、ヨーロッパ経済の中心的都市であったアントウェルペン(現ベルギー)でした。そして、このアントウェルペンもまた、フェリペ二世の領土だったのです。フェリペ二世とその帝国にとって、アントウェルペンの繁栄こそがきわめて重要だったことはいうまでもありません。

 そう考えると、「銀の流出でスペイン経済が衰退し、かわってネーデルラントが経済の中心として繁栄した」という見方は、少しおかしいことがわかります。どちらもフェリペ二世の領地だったのですから、スペインとネーデルラントで帝国内の異なる機能を担っていたと考えたほうがいいのではないでしょうか。現代の歴史家が、国民史の立場からフェリペ二世を批判するのは間違いだと私は思います。

玉木俊明(著). 2018-5-20. 『人に話したくなる世界史』. 文春新書. pp.109-110.

なんとなく、スペイン経済が衰退したのは安価な銀が大量に入ってきたためという気がしていましたが、玉木氏が仰るように、スペインもネーデルラントもどちらもフェリペ2世の領土でした。

地域性の違いはありますが(宗教の違いもありますね)スペインとネーデルラントはひとつの帝国に属しているのだと考えれば、玉木氏の仰ることは納得できます。

個人的には経済より人間模様に興味があるカール5世やフェリペ2世の時代ですが、経済的な事情や宗教、文化背景がわかるといろんなことが結びついてきます。

大人の勉強の楽しさって、こういうところにあるんでしょうね。知りたいことがいっぱいです。

『母をたずねて三千里』のマルコのお母さんが、イタリアのジェノヴァからアルゼンチンのブエノスアイレスに出稼ぎに行った背景は 11 の「蒸気船の世界史」の中の「マルコはなぜブエノスアイレスへ?」にあります。

ご興味があればぜひ。

他にも知って損は無い世界史が載っています。

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